地熱エネルギーの説明

「geothermal(地熱)」という言葉はギリシャ語のgeo(地球)と therme(熱)に由来しています。私たちの足元にある熱は、地殻内にある放射性物質が壊変して生じるものであると共に、地球が形成された時の残留エネルギーです。この熱は地球の内核から地表に向かって絶えず流れており、何十億年も利用できます。
地熱エネルギーはこの地球内部の熱を活用します。地熱エネルギーを得るには、地質学者が地下の熱水資源、つまり地熱貯留層を特定します。資源が見つかると、そこに到達する坑井を掘削します。坑井の深さは数百メートルから数キロメートルに及びます。
地熱エネルギーは新しいものではありません。人々は何千年もの間、自然に湧いた温泉を暖房や料理、入浴に利用してきました。しかし1904年に、イタリアのラルデレロ地熱発電所で初めてこの熱が発電に使われました。
地熱エネルギーの特徴は、以下をはじめとした多様な用途です。
冷暖房
建物の冷暖房は、地熱エネルギーの最も一般的な利用法です。地下の熱をそのまま利用できるほど温度が高い場合もあれば、地中熱ヒートポンプを活用する場合もあります。地中熱ヒートポンプは、安定した地中温度を利用して、冬は暖房を、夏は冷房を供給します。地中熱を利用した地域冷暖房システムを利用すれば、地区全体あるいはコミュニティ全体で、地下から取ったこの再生可能な熱で室内温度を調整することができます。
発電
地熱を地表に引き上げて蒸気を発生させることでタービンを回し、発電します。ドライスチーム式の発電所では流体がすでに蒸気に近いほど高温となっています。一方フラッシュ方式の発電所では、高温の流体を地下から汲み上げ、圧力の変化を利用して一気に蒸発させます。どちらの場合も、蒸気でタービンを回します。
バイナリーサイクル式の発電所は比較的低温の熱資源活用に適しています。通常、有機ランキンサイクル(ORC)と呼ばれるプロセスを採用しています。この場合、地熱流体を水より沸点の低い2次流体との熱交換装置に通します。地下流体の熱で作動流体が蒸気となり、タービンを回します。その後、作動流体は空気で冷やされるか水で凝縮され、地中に戻されます。
熱電併給プラント(CHP)では、電気と地域暖房用の温水を生産・供給します。
食品産業から採鉱まで
地熱井から取った熱は、温室や養殖場での産業プロセスや、農作物、紙、木材、セメントの乾燥にも利用されています。地熱井は将来的にグリーン水素やグリーンアンモニアを生産するための優れたクリーン・エネルギー源であり、地熱井と炭素回収・貯留を組み合わせられる見込みもあります。地熱エネルギーは、データセンターにクリーン・エネルギーを供給する、リチウムやシリカなどの鉱物を採掘するといった目的でも注目されるようになりました。地熱エネルギーの用途は多岐にわたり、その選択肢は増えています。
次世代の地熱技術
地熱システムからエネルギーを生み出すには、次の3つの要素が必要です。
- 地中の岩石が蓄えている熱
- 熱を地表に運ぶための流体
- 流体が高温の岩石を通過できるような透水性または孔隙率。
熱、流体、透水性は自然界にどこでも存在するわけではないため、地球上のどこでも地熱を利用可能にすることに焦点を当てた広範かつ継続的な研究と技術革新が行われています。一部のプロジェクトは石油・ガス会社との共同作業として実施されており、石油・ガス産業から生まれた技術を活用したプロジェクトもあります。これらは多くの場合、次世代の地熱技術と呼ばれます。次世代地熱として最もよく知られる3種類の技術を簡単に説明します。
- 地熱増産システム(EGS)は、
熱、水圧、化学物質で地下の岩石を刺激して人工的に透水性(割れ目)を作り出します。 - 高度地熱システム(AGS)は、
クローズドループ地熱とも呼ばれ、密閉された配管システムで人工流体を循環させて加熱するクローズドループ・システムです。 - 超臨界高温岩体(SHR)は、
地中のより深く、摂氏400度を超える場所に適用するシステムで、そこに水を注入して循環させます。水は「超臨界状態」になるまで加熱・加圧されます。するとシステム内をより素早く移動でき、単位質量あたりのエネルギー保持量が増すため、従来の地熱システムに比べて数倍効率がよくなります。
地熱エネルギーの5大メリット
現在進行中の気候変動、そしてクリーン・エネルギーへの転換の必要性から、地熱エネルギーへの注目度は高まり、投資は増えています。地熱がもたらす最大の利点を一部ご紹介します。
地熱は、
- 再生可能なエネルギー源です。
- 「常時運用」でき(ベースロード電源と表現されることが多い)、天候や季節に左右されることなく1日24時間、週7日、1年365日エネルギーを供給し続けます。
- 必要とする発電所設置スペースが少なくて済みます。地熱発電所が1 GWを発電するために使用するスペースは、太陽光発電所の12%です。
- 海外からのエネルギーや発電に使用する鉱物への輸入依存を軽減する、信頼性の高い国産エネルギー源です。
- 電力、冷暖房、製造業や食品業の産業プロセス、そして大規模データセンター用の電力と冷却やグリーン水素の生産といったその他技術との相乗効果など、多くの用途に利用できます。