地熱に投資する理由

世界的なエネルギー・トランジションにより、クリーンエネルギーに対する需要はかつてないほど高まりつつあります。
クリーンな未来のエネルギーミックスを実現するためには安定したクリーン・エネルギーを今すぐ活用することが求められており、その必要性はますます高まっています。
そのようなエネルギーを供給できるのは、地熱をおいて他にはありません。以下に、地熱発電に投資すべき納得の理由を6つ挙げます。
記事
August 22, 2024

世界で必要とされる電力は8,000 GWから、2050年には24,000 GWへと増加します。現在、エネルギーミックスのうち化石燃料を使用しない割合は40%です。2050年までには、24,000 GWすべてをクリーン電力にしなければなりません。

 

クリーンなベースロードエネルギー

 

エネルギー・トランジションを成功させるためには、太陽光発電や風力発電などの不安定なエネルギー源をサポートし送電網を安定させるベースロード電源が必要となります。このギャップを埋めることにより、高いリターンを期待することができます。

 

現在、地熱発電プロジェクトの平均内部収益率(IRR)はおよそ10~16%です。クリーンなベースロードエネルギーの需要が増えれば、市場価格の上昇も見込まれます。これにより、さらに高いリターンが期待でき、より多くのプロジェクトがより経済性を高めることができるようになるでしょう。

 

これまでに開発された地熱発電は、世界全体のポテンシャルに対してわずか3~8%

 

2024年の世界全体の地熱発電設備容量は16.3 GWe(電力)、173 GWth(熱)ですが、従来技術で発電し得る容量は現時点で、世界全体でそれぞれ200 GWeと5000 GWth以上あります。つまり、電力ポテンシャルの8%、熱ポテンシャルの3.5%しか開発されていないことになります。世界が2050年までにクリーン電力24,000 GWの達成を目指して急ぐ中、私たちの試算では、その電力の少なくとも10%、合計2,400 GWはベースロード電源でなければなりません。

 

米国だけでも、2050年までに追加で700~900 GWのクリーンな安定した発電設備容量が求められます。エネルギー省の2024年版報告書 The Pathway to Next-Generation Geothermal Power Commercial Liftoffによると、地熱資源はそのうちの90~300 GW(10~40%)を供給できる可能性があります。

 

 

地熱に投資する6つの理由

 

 

1. ポテンシャルを持つ再生可能エネルギー市場

 

現在、多くの資源が長期貯蔵、水素および炭素回収・貯留(CCS)の技術革新に充てられていますが、こうした技術はいまだ商業的に採算の合うものではありません。大きな可能性を秘める一方で、それがいつ実現するのか、手頃な価格になるのか、量産できるのかは未知数です。水力発電はすでにベースロード電力を供給しており、現在使用されている中で最大の再生可能エネルギー技術です。しかし、干ばつがますます頻発していることもあり、この10年間は拡大が鈍化すると予想されています。一方、地熱発電は商業利用できると証明された技術であり、今すぐ規模を拡大することができます。そして、その潜在力の大部分は手つかずのままです。

 

2. 24時間365日常時運用可能でかつクリーンなエネルギー

 

「クリーン」の基準が再生可能かどうかではなく化石燃料を使用しないという意味であるならば、原子力もクリーンで常に利用可能なベースロード電力を提供できることになります。しかし、原子力エネルギーには放射性廃棄物という副産物が伴います。加えて、新しい原子力発電所の開発コストは以前と比べて減少するどころか増加しているのです。

 

3. 長年にわたって安定的なキャッシュフローを確保

 

ベースロード電源には、何十年にもわたって安定したキャッシュフローをもたらします。地熱発電所のライフサイクルは非常に長く、20年から最長80年を超えることもあります。

 

4. 石油・ガス産業との提携によるメリット

 

石油・ガス産業には、掘削と地下エンジニアリングにおける100年以上の経験に加えて、世界中に豊富な知見が蓄積されています。世界が化石燃料から脱却するにつれ、多くの大手エネルギー企業が地熱エネルギーに関心を持ち資本を投下しています

 

5. 近年の投資急増

 

最近、大手石油・ガス会社による地熱エネルギーへの投資が大幅に増えています。2020年から2023年の間に、地熱を扱う次世代のスタートアップ企業は6億3,000万米ドル以上という大規模な資金を調達しました。

 

6. 支援政策の充実化

 

脱炭素化を推進し、国内のエネルギー安全保障を高めようとする動きは、米国とEUで地熱エネルギーの規模拡大を実現する政策イニシアチブの高まりにつながっています。

 

米国では2022年のインフレ抑制法(IRA)により、今後少なくとも10年間、3,690億米ドルの税額控除と補助金が気候変動関連プログラムとクリーンエネルギーソリューションに充てられることになりました。 ボストン・コンサルティング(BCG)によると、これにより地熱の均等化発電原価(LCOE)が40%下が地熱プロジェクトが太陽光発電や風力発電よりも安価になり、化石燃料発電と競争できるようになるかもしれません。

 

2024年1月には、欧州議会で96%の議員がヨーロッパの地熱エネルギー戦略を支持する決議案に賛成票を投じました。 この決議案によると、地熱エネルギーは2040年までにヨーロッパで使用される冷暖房の75%、電力の15%を賄う可能性があるとのことです。

 

最大の未開発エネルギー源 

 

私たちの足下にある熱は世界最大の未開発エネルギー源であり、地熱開発が世界的に急増する兆しがあります。 S&Pグローバルによると、地熱は世界で最も急成長している、クリーン・エネルギー技術の一つとされています。そして、100年以上前から実証されてきた技術でもあります。